育

日常を育む

リビングのソファに座ってる、お父さんの背中。いつもより、近寄りづらい気がする。怒ってるよね。お母さんが、早く話してきなさい、という。わかってる。言わなきゃいけない一言も、よくわかってる。でもやっぱり、足がすくんで、なかなか前に進めない。歯を食いしばって、一歩。また一歩。大きな背中が近づく度に、足が重くなる気がする。でも、背中は目の前にせまって、しゃべらなきゃ、と思うのに、声が出ない。しゃべらなきゃ。「お父さんの大切にしてるトロフィー、壊してごめんなさい」。やっと、言葉が出てきてくれた。お父さんがゆっくりと振り返った。怒ってる、と思ったのに、なぜか笑顔だった。よく言えたね。そう言って、笑っていた。